民法という名称の法典であります。法典とは体系的に1000条を超える

条文から構成された大法典です。

編集された一団の法律をいいます。

民法典は、5編に、そして各編は章・節などで分類・体系的に編集され、

「民法」と略称し、形式的意味の民法ともいいます。これに対して 

実質的意味の民法という言葉がありますが、これは、私法の一般法を指します。

私法とは、私的生活関係を均分的正義という原理に基づいて

規整する法であり、公的生活関係を分配的正義を

原理として規整する公法や、労働生活関係、経済生活関係、福祉生活関係など

本来均分的正義を尊びつつしかも分配的正義によってそれを匡正しながら

規整する社会法に対する概念であります。

また一般法とは、一般的に適用される法のことで、特別な人や事項に

適用される特別法に対する概念です。

換言すれば、実質的意味の民法とは、個人としての一般的な生活関係を、

自由・平等を基調として規整する法であるといえます。

民法典に収録されている条文は、そのほとんどが実質的意味の民法でありますが、

例えば民法37条8項の外国法人代表者に対する罰側は

公法規定であって実質的意味の民法ではありません。

逆に、民法典に収録されているもの以外に、慣習法ないし不文法としての

実質的意味の民法、例えば内縁の規制のようなものも多数存在します。 

民法典の編成方式には、人・物・訴えの三編に分かつローマ式

総則・物権・債権等に分かつパンデクテン式(ドイツ式)とがあり、

日本の現行民法典はその後者に属するものであります。

民法典は、第一編から第三編は明治29年に、第四編と第五編は明治31年に

制定公布され、共に明治31年7月16日から施行されましたが、

終戦後、日本国憲法の施行に伴って、昭和22年に

第四編と第五編が全面的に改正され、

同時に冒頭に第1条と第1条の2とが挿入されて、従来の第1条の3とする等の

改正があり、昭和23年1月1日から施行されました。

その後昭和47年4月に根抵当の規定が、同56年1月に妻の相続分の

増加等の改正が、同63年1月に特別養子制度の規定が、

平成12年に新成年後見制度の規定が、同16年に担保物権等に関する改定が、

同17年に表記を全面的に現代語化する等の改定が、

同20年に法人制度の改正が施行されています。

なお、現行民法典に先立って、明治23年に公布され、26年を期して

施行される予定だった、いわゆる旧民法があります。

その内容は財産編、財産取得編、債権担保編、証拠編(3月公布)、および人事編、

財産取得編286条以下(10月公布)で、フランス法に近く

ローマ式をとっていますが、「民法出テ、忠孝亡フ」等の

攻撃を受けて施行延期となり、

そのうち前掲現行民法典が

成立して実施されることがありませんでした。