債権(さいけん)


ある人(債権者)からほかの人(債務者)に対して、「1万円を支払いなさい」とか、

あの建物を引き渡しなさい」などというように、一定の行為を請求する

権利をいいます。


債務者が任意にその行為をしないときには、債務者は裁判所に訴えて強制的に

履行してもらうこともできます(現実的履行の強制)。


債務者が行為をしないことによって損害が生ずれば、債権者は損害を

賠償してもらうことができます。


そればかりではなく、第三者が不法に債権の実現を妨げるときには、

債権者は第三者に対しても損害賠償を請求できるのです。


今日の社会生活においては、商品の売買や、金銭の貸借、借地借家、労働契約などは

もちろん、交通事故のような不法行為から生ずる損害賠償請求権など債権関係が

経済上重要な役割を占めており、債権は財産関係の中心となっています。


債権と並んで財産権のうちで重要な地位を占めている所有権のような物権も、

今日ではその重要性において債権に一歩譲ったといってもいいでしょう。


なぜなら、今日では所有者が直接生産活動をするよりも、企業者は金銭を借り入れ、

労働者を雇い入れ、商品を他に売買するなど、生産・消費過程のほとんどが

何らかの形で債権関係によって支えられているからです。


ところで、法律的に物権と債権を比較すると、債権の特色はこのようです。

すなわち、物権は物を直接支配しうる権利でありますので、

第三者の介入を認めたのでは直接の支配は

貫徹できません。

そこで、物権には排他性が与えられています。


これに対し、債権は他人に一定の行為を請求しうるに留まりますので、

奴隷のように人間が人間を支配しえない以上、債権の実現は、

債務者の意思に委ねられるほかありません。


ですので、同一時刻にほかの場所でピアノを弾く契約のように、債務者が同一内容の

債権を他にも与えられている場合には、債務者はその第三者を排して債権の履行を

受け取ることができず、債務者が自分の債権を満足してもらえないときには、

損害の賠償を請求できるに留まります。


故に債権には排他性がありません。