人または財産の結合であって権利を持ち、義務を負うことのできるものです。
いうまでもなく、こうした権利能力の認められる典型は自然人で
ありますが、自然人にこの地位が認められたのは、彼が
社会においてさまざまの仕事をしており、それゆえ、
法関係の主体として権利・義務を持たせるにふさわしいからなのです。
ところが、社会で仕事をするものは必ずしも肉体を持つ自然人には
限られません。一定の目的を持って集まった人の結合である
団体(社団)も、一定の目的にささげられた財産(財団)も、
それぞれ社会において重要な仕事を営み、そのゆえに
法関係の主体とするにふさわしいです。
そこで法は、自然人のほか、これらのものにもまた権利能力を与えて法人としました。
国家、市町村、各種の社会、私学の多く、労働組合の多くはみな法人です。
権利能力を持つ人はただ自然人に限ると考える立場からすると、法人は
元来そういう地位を持てませんが、法の力によって自然人に擬制し、
権利を持ち、義務を負えるようにしたのだという、いわゆる
法人擬制説が生まれます。この立場ではどうしても法人の活動を制限しやすく、
法人の定款や寄附行為に目的として書かれたことを中心にして、
そのことだけについて権利・義務を持ち、行動でき、責任を
負うというように考えやすいです。
これに反し、権利能力は社会で仕事をしているものに対して認められると考えれば、
法人もまた自然人と並んで多くの仕事を行っている実在のものであるので、
こういう限定は必要なく、自然人と同様その活動範囲を広く認めるように
なります。したがって目的それ自体でなく、目的を遂行するため
相当と認められるもの一般について、権利・義務を持ち、
行為し、責任を負うものであると考えるようになります。
これが法人実在説です。
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