到達主義

手紙で意思表示がされる場合は、通常、手紙を書き(表白)、ポストに入れ(発信)、

相手方に配達され(到達)、読まれる(了知)、という順序をたどるわけであるが、

民法は、表意者・相手方の利害を考慮し、隔地者に対する意思表示は、

原則として、相手方に到達したときに、

効力を生ずるものと定めました。

手紙が相手方の郵便受けに入れられ、家族や同居人に受領されるなど、相手方の

支配内に入って了知し得る状態にあれば、到達したことになります。

到達すれば、たとえ、発信後に、表意者が死亡し無能力となっても、そのことから、

意思表示が無効になることはありません。

このような到達主義の原則については、次の点を留意する必要があります。

第一に、他に無効原因があれば、到達しても効力を生じないことは

いうまでもありません。

第二に、効力発生時期について、特別の規定がある場合にはそれによります。

重要なものを挙げれば、

①相手方が未成年者または成年被後見人であるときは、その法定代理人が、

到達を知らない限り、意思表示の効力が生じたことを、

主張することができません。

②契約の承諾については、取引の敏速を尊び発信主義がとられています。

第三に、以上を除いて、対話者間の意思表示や相手方のない

意思表示については、特に規定がありません。

前者は、表白・発信・到達・了知の間に時間的な差がなく、

後者は、表白があるにすぎないからです。

もっとも、対話者間の意思表示については、到達後相手方の了知を

欠く場合もないではないのです。

このような場合も、相手方が了知し得る状態にあれば、

効力を生ずるものと解されています。