抗弁

 被告が自ら立証責任を負う主要事実を、原告の請求を排斥するために、

主張することです。「売買代金を支払え」という請求に対して、

「その代金は既に支払った」という抗弁もあるし、また、

「売買契約は錯誤により無効であるから、

代金債権は発生していない」と

主張する抗弁もあります。

また、同時履行を主張するのも抗弁です。

 抗弁には,相手方の主張事実を認めながら新たな事実を主張する抗弁と、

相手方の主張を争いながら予備的に主張する抗弁とがあります。

後者が仮定抗弁です。これは「金を借りた事実はない。

もし、仮に借りたとしても、既に弁済している」とか、

「既に弁済している。もし、弁済してなかったとしても、

既に消滅時効が完成しているので、これを援用する」

というように、前者の弁済の抗弁、

後者の消滅時効の抗弁は、

はじめから、これを認めてもらおうとして裁判所に対して陳述するのではなく、

まず、第一次的に否認として陳述した反対事実や抗弁が

認められない場合にはじめて認めてもらおうとして、

第二次的に主張する抗弁です。

これを仮定抗弁あるいは予備的抗弁といいます。

 この抗弁は、第一次的に主張する事実と第二次的に主張する事実とは

両立しない関係にあり、前者が認められるときは、

後者は法律的に無意味になる関係にあります。

しかし、いずれが認められるにしても、原告の請求は排斥されるから、

被告としては、その目的を達することができるのであるが、

いずれも判決理由中において判断されるため、

既判力は生じません。

そこで、被告が、このように順位をつけて主張したとしても、裁判所としては、

その順位に拘束されることなく、仮定抗弁のほうがより容易に

認められると判断するときは、これから先に

審理することができるのです。