内縁(ないえん)



  性の独占提供に合意または暗黙の承認をし合っている男女関係であるにもかかわらず、

 婚姻届の提出が不注意または故意によって怠られている場合に、この事実上の夫婦

 またはその関係を内縁といいます。

 婚姻の両当事者には何にも優先して無条件保護義務が相互に課せられていますので、

 婚姻の成立の有無を明確にする厳格主義の要請によって、市区町村長に対する

 婚姻届の提出が婚姻の成立の要件とされています。


  したがって、婚姻届の提出のない事実上の夫婦は、その本質は非婚姻にあたり、

 我が国の民法上夫婦という親族関係にある者ではあり得ず、姻族関係も発生

 することはありません(戸籍上のものとしての共通の氏を称することが

 できませんし、同一戸籍に編成されることもあり得ません。未成年が

 婚姻としたときは、成年に達したものと看做みなす753条の適用も

 ありません)。


  しかし、内縁関係にある男女の一方が要保護性の補完(扶養など)がなされねば

 ならないという法理に基づき、届出がされていなくても内縁の夫婦の一方に、

 他方に対する扶養等の保護が強要されねばならないことになります。

 かくして内縁の夫婦は、いわば関係法上は婚姻関係ではありませんが

 保護法上は夫婦に準ずる準婚の関係となります。

 我が国の学説では一般に上記の関係法・保護法の区別を立てないまま、

 内縁を目して準婚とするという矛盾を発しています。