狭義の親族関係(きょうぎのしんぞくかんけい)



  夫婦・親子関係の発生が直接・能動的なものであるのに対し(自因関係)、夫婦・親子の

 ほかの親族関係の発生はおしなべて間接・受動的なものであり(他因関係)、すべては

 統一的な原理に服します(これらの親族関係を契約で作り出すことを許可しないなど)。

 こうしたところから、これらの親族関係を包摂して狭義の親族法が構成されている

 所以があります。

 狭義の親族関係の成否は一に夫婦・親子関係の成否の上に立ち、夫婦関係の存否も親子

 関係の存否も狭義の親族関係の存否もともに厳格主義に従わせるべきものです。

 これらのどの関係に対しても最優先で無条件の保護が分配され、それはあいまいに

 親族関係ありとされて恣意的に強要することが許されないものです。

 こうしていわば関係法としての夫婦法と関係法としての親子法にあってはその関係の

 発生・変動・消滅についてそれぞれ各論において厳格に規定が与えられているのに

 対し(2章婚姻・3章親子)、関係法としての狭義の親族法については各論に

 まったく規定を欠いているのは、狭義の親族関係の発生・変動・消滅は夫婦・

 親子関係の発生・変動・消滅の上に一律に発生・消滅する他因的な関係で
 
 あるところから、親族編の総論規定として一括して規定が置かれており、

 各論的に規定すべきものは何もないからです。

 
  広く親族関係ある者の間に要保護性補完の義務が強要されるのは、社会経済的な生活

 環境に規定づけられて存在している相互扶助本能の法的受容に基づくものであり、

 この要保護性の補完義務を除いては狭義の親族関係にある者も他人間における

 と同じく相互独立の存在であって、財産法の規律に服するだけということに

 なります(狭義の親族関係にある者の間の貸借・売買関係,etc)。

 
  およそ要保護性の補完は、事実的な身の回りの世話である身辺監護、財産管理・法律

 行為の同意と法定代理である行為的監護および扶養の名が与えられている経済的

 監護の3つであり、身辺監護と行為的監護との統一的次元に経済的監護が

 相対するものをなしています。

 狭義の親族関係にある者にはこれらの要保護性補完の義務が強要されますが、市民社会を

 構成する市民個々人は最後の一人に至るまで最優先・無条件の保護が市民社会法たる

 民法上に保障されなければならず、したがって親族関係ある者を欠く天涯の孤児・

 孤老もその例外とすることはできません。

 こうして身辺監護・行為的監護については狭義の親族関係に立つ者なくても要保護者と

 地縁を等しくする者にもこれを負わせ(地縁関係に現れる相互扶助の法的受容)、

 経済的監護は狭義の親族関係ある者に限定し、他人間にこれを負わせること

 なく社会自らが負担すべきものとしています(生活保護ないし社会保障)。