商事に関する事実上の慣行です。「事実たる慣習」の1種であり、

商慣習法とは一応区別されます。

商慣習法は法規範たる性質を有するのに対し、商慣習は当事者の意思表示の

解釈のための材料にすぎないからであります。そのため現実の効果として

両者の間に次のような相違が認められます。
 
 ①民商法の強行法規に違反する商慣習法は拘束力を持ちませんが、商慣習は

それが公序良俗に反しない限り、成立することが可能であります。
 
 ②商慣習法違反の判決に対しては、法律問題として上告できますが、

これに反して単なる商慣習違反の判決は、事実認定の問題に関するものだから、

上告理由になるとは限りません。
 
 そこで両者の区別の標準を何に求めるか。通説は商慣習に法たる確信が

加わることによって商慣習法となると解しています。

両者をまったく同視する見解もあります。
 
 判例はいずれかといえば後の説に近いです。すなわち、一般的慣行がありながら、

当事者が特にこれを排除することをはっきり示されない以上、

その慣行に従う意思があると推定すべきであるとして、

現実に両者を区別する実益の乏しいことを明らかにしています。
 
 なお、進歩的傾向を持つ商法の分野では、商慣習の成立する機会は多く、

判例によってそれが商慣習法として承認され、それが、

やがて法改正に当たって整備され、

法制度の中に取り込まれていく傾向は強いです。

顕著な事例として、例えば白地手形の有効性、白紙委任状付記名株式の流通に関する

商慣習と株式譲渡証による株式の譲渡の承認、株式払込領収証による

株券発行前の株式の善意取得などがあります。

この商慣習に対しては、民法に優先する効力を促しています。