当事者尋問


 当事者尋問とは、当事者本人を宣誓させたうえで証拠方法として、その見聞した事実の

陳述を証拠資料とするための証拠調べのことです。

ところが、訴訟の当事者である本人を、

証人と同様に、宣誓のうえ、陳述させて、

それを証拠資料とするのでは、

相手方の主張を真実と認めなければならなかったり、自分に不利益な事実も

陳述しなければならないのでは、本人に酷ではないか、また、

苦し紛れに真実を陳述しないこともあり得るので、あまり、

信用できないのではないか、という懸念から、

旧法では、当事者尋問は

「裁判所カ証拠調ニ依リテ心証ヲ得ルコト能ハサルトキ」に初めてできるという、

「補充性の原則」を規定していました。そして、この補充性の要件に合わせて、

裁判実務では、当事者尋問は訴訟の最終段階で行われるのが通常でした。

しかし、当事者尋問を後回しにしなければならない、

上述の理由は根拠に乏しく、

かえって、事案の真相の全体をだれよりもよく知っている当事者の陳述を、

部分的にしか知らない証人尋問の後からでなければ、

聴くことができないというのは、合理的ではない、

という厳しい批判が続いていたために、

新法では、この補充性の原則を廃止しました。

ただ、一応は、「証人及び当事者本人の尋問を行うときは、まず証人の尋問をする」

と定めて、初めから、他の証拠調べを何もしないで、当事者本人からだけ

証拠を集めるということが、職権でもできるところから、とかく、

弊害があり得るのではないかという配慮から、原則として

それを避けました。その上で裁判所が

「適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、まず、当事者本人の尋問をすることが

できる」と規定しています。いずれにしても、本人尋問の結果の陳述は、

他の証拠資料の証明力となんら変わることはありません。