ある者について、犯罪を犯したと思われるだけの理由が相当にあり、しかも住所が不定であったり、

犯罪やその証拠をうやむやにするおそれがあったり、また逃亡するおそれがあったりするとき、

裁判所または裁判長、裁判官が行う強制処分の一つで、勾留状によって行われます。

すなわち主としてその逃亡または証拠隠滅を防止する目的から、

被告人・被疑者を、刑事施設に入れておくのです。

 有罪が決まる前のものであるから、刑の一種である拘留とは異なるし、比較的に期間が長く、

要求されれば勾留の理由を明らかにしなければならない(勾留理由の開示)点で抑留とも異なります。

 勾留状には被告人(被疑者)の氏名および住居、罪名、犯罪事実の大要、勾留すべき刑事施設、

有効期間(原則は7日)、期間経過後は勾留できず、勾留状を返さなければならないことを

記入し、裁判長または裁判官が記名・押印しなければなりません。

起訴前の勾留状(被疑者に対するもの。検察官が請求する。)も、

起訴後のそれ(被告人に対するもの。)も、共に、

裁判所の執行機関に対する命令状の性質を持ちます。

 勾留は強制処分であり、比較的期間も長いから、不当に濫用されることがないようにするため

二つの制度があります。一つは保釈であり、一つは勾留期間の制度です。後者は

被告人については原則として2ヶ月、1ヶ月ごとに期間更新ができるが、

それも原則として1回だけです。被疑者については

原則として10日、最大限20日です。

 勾留の理由のうち、住所不定と逃亡のおそれとは、不出頭を防ぐためであるが、罪証湮(隠)滅の

おそれということについては議論があります。つまり罪証湮滅ということを被疑者取調べの

口実としたり、保釈を認めないことは、結局、勾留を証拠収集(自白をとる)、

取調べのために、もっぱら用いることになり、任意捜査の原則は

大きくせばめられていまう、という批判です。

この立場、つまり勾留はもっぱら公判への出頭を確保するためのもの、と考えれば、

次のような別件勾留はもちろん許されないことになります。すなわち、

軽い甲事実でまず勾留しておきながら、実は重い乙事件の

取調べにその期間を使おうというやり方です。

これについては別件逮捕についてとまったく同様の問題があります(「別件逮捕」の項参照)。別件勾留の

弊害は、後に刑への参入や、刑事補償の活用でチェックできるとする考えがあるが、

十分な理由とはいえないです。

 なお、勾留の内容は、自由刑とほとんど変わらないので、刑が決定したとき、

勾留されていた期間はその分だけ自由刑が既に執行されたのと同様に

扱われます。被告人の勾留につき「未決勾留」の項参照です。

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