弁論の全趣旨


 民訴法は二つの異なった概念として用いている。一つは擬制自白の成否の

判断基準としてであり、もう一つは証拠原因としてです。

ここでは後者について述べます。

 証拠調べの結果以外の、口頭弁論に現れたすべての資料・状況をいいます。

当事者の主張の内容だけではなくて、その主張の仕方(例えば、あやふやな態度、

陳述の撤回・訂正、時機に遅れて提出したことなど)や釈明処分としてなした

検証・鑑定、それに調査の嘱託の結果などのすべての事情です。

裁判所は当事者の一方が主張し、相手方から争われた事実の存否を判断するのに、

このような弁論の全趣旨を利用することができます。つまり、これだけで、

事実を認定することができるし、あるいは証拠調べの結果を補充するために

利用することもできる。更には、証拠調べの結果よりも、

弁論の全趣旨を重視して心証を形成することができます。