法律上あることをすることを期待されている者がそれを行なわないこと、

 すなわち不作為によって構成される犯罪をいいます。
 
 作為犯の対義語にあたります。

 構成要件がはじめから不作為の形式で決められている場合と、作為の形式で

 規定されている構成要件が不作為により実現される場合があります。

 前者は、真正(純正)不作為犯と称され、現行法上は、不解散罪、

 不退去罪、変死者密葬罪、不保護罪の4つが規定されています

 (なお、変死者密葬罪については反対説があります)。

 後者は不真正(不純正)不作為犯と称されます。


  不作為犯も作為犯と同様に故意の場合に限られません。

 それで、例えば踏切番が不注意で居眠りをして信号を出さなかったため、

 汽車を衝突させたような場合は、過失の不作為による

 列車転覆罪になります。

 このような場合は、忘却犯ともいわれています。


  不真正不作為犯が成り立つためには、行為者に、結果の生じるのを防止すべき

 法的義務(作為義務)があることが必要となります。

 この義務が生じる根拠は、法令によれば、契約によると、慣習上または

 条理上認められるものであるとを問いません。

 この作為義務の違反が不真正不作為犯の違法性を基礎付けます。

 しかしながら、これだけでは充分ではありません。

 更にその不作為が一定の構成要件に該当し、実行行為としての

 定型性を持つことが必要です。


  不真正不作為犯は、理論上すべての犯罪について考えられます。

 しかし、従来、学説において不真正不作為犯が問題とされているのは、

 結果犯についてでありました。

 それは、結果犯では、ある結果が生じることが要件とされていますので、

 不作為でその結果を生じさせることができるのかが問題となりますし、

 また、不作為の違法性を基礎付ける作為義務も、その性質・内容に

 おいて、真正不作為犯の場合とは異なるものがあるからです。


  真正不作為犯には実行の着手があるのかという点については学説の対立が

 ありますが、最近は肯定する学説が有力となっています。

 そして、不退去の罪において、退去を要求されたものが退去に必要な

 時間を過ぎる前に突き出されたような場合は未遂だとされています

 (なお、学者によっては、不作為そのものによって犯罪の構成される

 ものを真正不作為犯、結果と結び付けられる不作為を不真正

 不作為犯と称しています)。