営利事業(例えば物の製造・加工、販売・保管・運送・保険、各種のサービスの

提供など)を営む企業の組織と運営および活動全般について規律するため、

特に「商法」という名称を付けて制定された法典をいいます。

これ以外に商事特別法商事慣習法商事条約など成文法の有無に関係なく私企業

に関する法の総体を「広い意味の商法」と呼ぶが、

一般に商法といえば、この商法典を指します。


 民法のほかに商法を必要とする理由は、その対象となる取引が営利を目的として展開

されるため、それに対応する特殊な企業形態が形成され、その組織・運営に特別の規制

が必要であり、その取引活動も大量・集団的かつ継続的で高度の技術的性格を持ち、

一般人の生活を対象とする民法では対応しきれないからです。

しかし両者は一般法と特別法の関係にあります。


 現行商法典は明治三十二年に制定・施行され、総則・会社・商行為・手形・海商の五編

から成っていたが、明治四十四年をはじめ幾多の改正を経て昭和九年手形法、

小切手法がそれぞれ商法典から分離独立、単行法として成立し、

昭和十三年、本来は会社編に収まるべき有限会社法が

立法手続の便宜から特別法として分離制定されました。


 この法典は経済の発展に呼応し、会社法に関してしばしば大改正がなされました。

まず昭和二十五年改正では、それまでドイツ法系に属していた株式会社法に

英米法系の諸制度が導入されました。

授権資本制度、無額面株式の導入、取締役会・代表取締役の法定と監査役の権限の縮小、

取締役の権限の拡大に対応する株主の経営監視権の強化(代表訴訟・違法行為の

差止請求権の新設)がこの時の主な改正点です。

昭和三十年には株主の新株引受権につき、昭和三十七年に計算規定につき、

昭和四十一年には株式譲渡や株券不所持制度の採用等につき、

昭和四十九年には監査制度全般にわたり改正がなされた。

昭和五十六年には株式単位の引上げ、株主総会活性化のため株主権行使に関する財産上の

利益供与の禁止、株主提案権、監査役の取締役会への出席権、

招集権等監査制度の強化と計算書類の公示規定の合理化、

新株引受権付社債の許容など大改正がなされました。

 
 平成二年には株主会社の最低資本金制度が導入され、一人会社の設立も認められ設立

調査の簡易化、現物出資等に対する財産価額てん補責任の採用など小規模会社に

適合する法の整備がなされ、あわせて配当優先株、

株式配当・株式無償交付と株式分割との

制度の統合等につき改正がなされました。

平成五年・六年には代表訴訟制度の改善、株主の帳簿・書類閲覧請求権の要件の緩和など

株主の権利の強化および監査役の任期の伸長、大会社における監査役会の法定と

社外監査役制度の導入等監査制度の充実ならびに社債制度に関する大幅な改正

に加え従業員持株制度の促進と株式消却など企業金融に弾力性を与え、

株式譲渡制限会社における先買権者の指定や相続人の株式の処分を容易にするため、

会社による自己株式取得規制の緩和とその弊害防止

のための一連の改正がなされました。 

 平成九年には合併手続改正、ストック・オプション制度導入、株式消却特例法制定、

自己株式取得手続緩和、罰則強化等の改正が行われ、平成十一年から平成十六年に

かけては株式交換・株式移転制度新設、資産時価評価、会社分割制度新設、

罰則強化、金庫株解禁、単元株制度創設、種類株式改正、

代表訴訟の見直し、委員会等設置会社創設、

自己株式取得手続緩和、電子公告制度創設、

株券ペーパーレス化などの改正が続きました。

 平成十七年、会社法がそれまでの商法第二編から分離、単行法として独立し、

従来の有限会社法、商法特例法等もまとめた一つの法典である「会社法」

として制定され、同時に総則・商行為編についても改正が行われました。

会社法では会社法制の現代化として、条文のひらがな口語体化、株式会社と有限会社の

規定の統合、最低資本金制度の見直し、事後設立規制の見直し、会社機関設計に

関する制度の整備、株式・新株予約権・社債制度の見直し、組織再編制度の見直し、

剰余金分配制度の見直し、取締役責任規定の見直し、代表訴訟制度の見直し、

会計参与制度の創設、会計監査制度の整備、合名会社と合資会社の規定の整備、

合同会社の制度の創設、会社整理制度の廃止、特別清算制度の見直しなど、

会社法制全般にわたる改正がなされました。


 平成二十年には保険法が商行為編から分離し、単行法として制定されました。 

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