ドイツのナーグラー(Nagler)によって基礎付けられた不真正不作為犯

 理論に関する学説をいいます。

 保障者説ともいいます。

 ドイツの通説で我が国にも有力な支持者を得ています。


  理論史的にみると、不真正不作為犯の問題性は、その因果性・違法性の問題性は、

 その因果性・違法性の面から着目されましたが、ナーグラーは、これを端的に

 構成要件該当性の問題として把握したのです。


  不真正不作為犯における作為義務を違法性のメルクマールと解する従来の

 通説的見解によると、構成要件的結果の発生を回避しない不作為は

 当該構成要件に該当することになりますので、例えば、街路の

 行路病者を救助し得たにもかかわらずこれを放置し死亡

 せしめたすべての通行人は、少なくとも殺人罪の構成

 要件に該当することになり不合理です。


  そこで、この救助しないという不作為を当該行路病者の殺害という作為と

 構成要件に同視し得るかといった問題、換言すると、構成要件的等

 価値性の問題は、構成要件的結果の発生を回避すべき「法律上

 の義務」を負う者に対してのみ妥当するのです。

 この法律上の義務が保障義務であり、それを負担する地位を

 「保障人的地位」といい、構成要件の要素とされたのです。

 もっとも、このナーグラーの学説に対しては、罪刑法定

 主義の観点で疑問符が打たれています。