検察官が公訴を提起する(=起訴する)機能を公訴権と呼ぶが、起訴独占主義、

起訴便宜主義における弊害と関連して、この機能が適正に

行使されているとは思われない場合があります。

不起訴処分に対しては、一応チェックシステムがある(検察審査会、準起訴手続)が、

起訴処分に対しては、ないです。例えば、極めて些細な事件で、

普通なら起訴されないのに、政治的色彩を

帯びているため起訴されたとしてかみられないような場合(ビラ1、2枚はっただけで

野外広告物条例ないし軽犯罪法違反として起訴)、結果的にも無罪や刑の

免除で終わっていて、そもそも起訴すべきではなかったのではないかという疑いが生じます。

このようなケースを、権利の濫用の理論になぞえらえて、公訴権の濫用として、

チェックしようという考え方があります。

 もっとも、どういう場合を濫用とするか、濫用とされた場合どうするかについては、

必ずしも一定していません。前者につき、先の例のほか、同一事件の被疑者の

うち、ある者だけを起訴するとか、同種事件なのにある事件だけを

起訴するなどの差別的起訴が濫用例として考えられます。

なお、公害のような会社的事件について、

加害者と被害者に対する国家の対処に著しい落差があることから、被害者に対する起訴を

公訴権の濫用として注目された事例があります(熊本水俣病に関連する傷害事件)。

後者につき、公訴棄却、免停などが主張されています。