相当因果関係説は、ある行為からそのような結果が生じるのが経験上通常である
場合に、因果関係があるとする因果関係についての考え方の一つです。
この説は条件説を排斥したり否定したりするものではなく、条件説で因果関係が
あるとされたものの中から刑法上重要なものの範囲を限定していこうとする
もので、現在の通説となっています。
この説は、どの範囲の事情を基礎にして相当因果関係を考えるのかによって、
更に以下の三つに分類されます。
①主観説→行為当時に行為者が認識したか認識することができた事情を
基礎とすべきだとします。
ドイツのクリースが提唱した説です。
②客観説→リューメインが提唱した説で、裁判の際、裁判官の立場に立って、
行為当時に存在したすべての事情と予見可能の事後の事情を
基礎とすべきだというものです。
③折衷説→トレーガーの提唱した説で、行為の時に、通常人が知りまたは
予見することができたであろう一般的事情と、行為者が現に
知りまたは予見していた特別の事情を基礎と
すべきだとするものです。
主観説に対しては、行為者の知らなかった事情をすべて除外する点で
狭すぎるという批判がなされ、客観説に対しては行為当時の事情と
行為後に発生した事情を区別するのは理論的根拠を欠くとか、
行為当時の事情に関する限り、一般人も知ることができず
行為者も知らなかった特殊の事情をも基礎とするのは、
経験上通常という相当因果関係説の根本趣旨と
矛盾するとかという批判がなされています。
折衷説が現在の通説です。
判例は、相当因果関係説を採るようにみえるものも若干伺えますが、
基本的には条件説の立場に立っています。
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