正当防衛の要件の一つである「急迫不正の侵害」が、人の行為ではなく、
それ以外の単なる侵害の事実であるとき、これに対して防衛行為を
なす場合をいいます。
問題となるのは主として、他人の所有にかかる動物からの
侵害の場合です。
この問題についての学説は、かなり細かく分化されていますが、
大別すると、
①動物の侵害は、不正の侵害とはいえないという根拠によって
当防衛の成立を認めず緊急避難だけが許されるとする説と、
②動物からの侵害も原則として人の行為に由来するとして
正当防衛の成立を認める説
とに分かれます。
もっとも、前の説に於いても、人が動物を道具として侵害を行なうときは、
たとえ、それが、故意行為ではなく、猛犬を
過失行為であったとしても、動物が侵害者の所有に属する限り、
正当防衛を行なうことができるものとされています。
したがって、前説と後説との違いは、後説に於いては、動物からの侵害は、
原則として、人の行為に基づくものと判断され、まず正当防衛が
なし得る、とする点にあることとなります。
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