犯罪の実行に着手したが、結果を発生させるに至らない場合をいいます。
犯罪は、その実行に取りかかったが、はじめ行為者が予想したとおり
全部実行を終え、所期の結果をあげることもあれば、またその
途中で何か故障があって挫折することもあり、また自ら
中止する場合、更には、行為を終了したが、
結果の得られない場合もあります。
そこで、我が国の刑法は犯罪の実行に着手し、ある罪となるべき事実の全部を
実現したものとして「既遂」と称し、これに対し、その実行を開始したが、
何らかの事情により、法律が各個の条文において、罪とし規定している
事実の全部を実現するに至らなかった場合を、「未遂」と称します。
そして、このような未遂を罪として処罰するのは、特に刑法の
ある条文で、その旨を明確に規定している場合に
限られます。
すなわち「未遂犯」というのは、行為者が主観的には、ある犯罪を実行
しようとの故意を持ち、客観的には、その罪となるべき事実(いわゆる
構成要件的事実をいいます)の一部となる行為を演じたが、何らかの
事由のために行為を続行できなかったか、若しくは全部の行為を
終えたが、所期の結果を得ることができなかった場合をいいます。
我が国の刑法は、すべての犯罪について、このような未遂を罪と
して認めるのではなく、放火とか殺人とか、重要な法益を
侵害する犯罪についてのみ、これを認めています。
注意すべき点は、我が国の刑法の未遂犯には、
以下の二つの場合があることです。
①一つは、犯人の自由意思によらず、外界の事情によって犯罪の完了に
至らない場合であり、これを「狭義の未遂犯」または
「障害未遂犯」と称します。
その法定犯は既遂罪と同じではありますが、裁判官は自由裁量によって
刑を減軽することができます。
②二つは、行為者自身の意思によって犯罪を中断せしめた場合であり、
これを中止犯と称します。
この場合には、刑を必ず減軽、または免除しなければなりません。
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