犯罪として規定されている行為を開始することをいいます。


  未遂犯の成立には、客観的要件の一つとして「実行の開始」または

 「実行の着手」ということが必要となります。

 行為がこのような段階に入る以前のものは「予備」にすぎません。

 予備の段階で処罰されるのは、極めてまれで、重要な法益を

 侵害する犯罪の場合であり、且つ特にその旨の明文が

 記されている場合に限られています。


  では実際問題として、どういう状態に達したとき、実行の着手があるのか

 という場合に、おおむね三つの考え方があります。


 
①客観的な見解であり、いわゆる構成要件に属する行為事実の一部分、
 またはこれに密接な関係のある行為が行なわれた時だとします。
 
 
②主観的な見解であり、これによれば、ある犯罪を犯そうとする故意が、
  行為者の行動により、会部的に表現せられたとみられるべき段階に
 達した時、ここに実行の着手があったものとします。
 
 
③要するに、犯罪となるべき事実に当たる行為の一部の実行によって、
 行為者の犯罪実行への意思が確認されるに至った時、
 ここに実行の着手があったというべきです。