ある財産について2つ以上の保険が重ねて付けられ、しかも

その保険金額の合計が保険価格

(「超過保険」)を超過する保険。ただし、

例えば火災保険と盗難保険とのように、保険事故が異なる

保険が付けられたときは、

重複保険とはなりません。

また、同じ火災保険であっても、例えば所有者と抵当権者というように、

その財産に対する関係の異なる者が、

それぞれ自分のために保険を付けたときも、

重複保険とはなりません。

 重複保険についても、かつて商法は、数個の保険が同時に

結ばれた場合(同時重複保険)には、各保険者の保険金額は、

それぞれの保険金額の割合により、合計額が

保険価格を超えない範囲で有効とし、

それらが相前後して結ばれた場合(異時重複保険)には、先の保険者の

保険金額が保険価格に不足する場合、その不足分の

範囲についてだけ有効であるとして、

超過部分を無効としていました。

ただし、実際上は超過保険につき述べたように、重複して

超過する部分の契約を必ずしも無効とはせず、

異時重複保険も契約によって同時重複保険と

同様の取扱いがなされていました。

 平成20年に成立した保険法では、超過部分について

有効であることを前提とし、各保険者は自己が

てん補すべき損害額(いわゆる独立責任額)の

全額について保険給付をする義務を

負うものと改正されました。

 例えば保険価格2000万円の家屋について、甲保険会社・乙保険会社と

それぞれ1500万円ずつの保険を同時に契約していた場合に

1000万円の損害が生じたときは、旧商法の規定を

そのまま適用すれば甲・乙保険会社の

支払額は500万円ずつとなりますが、

保険法の規定によれば独立責任額の全額を支払うよう請求を受けた

保険会社は1000万円全額を超える部分につき他の

保険会社に求償すべきことになります。