財産を破産財団に回復する破産管財人の権利です。
破産者は、倒産状態に陥っても、破産手続が開始されるまでの間に、
資産調達や生活のために財産を不当に安く処分したり、財産を
隠匿したり、特定の債権者にだけ弁済したり、あるいは
担保を提供するなど、一般債権者を害する行為を
なすことが多いです
破産手続が開始されるまでは、破産者は自己の財産を自由に処分できるのが
原則であるといっても、事実上経済的にゆきづまった状態で債務者が
まったく自由に財産の処分行為や金銭の出捐を行うことができるとするのは、
できるだけ債務者の財産を充実させて債権者への配当に充て、債権者間の
公平を確保する倒産処理手続の理念に合いません。
そこで、破産手続開始後に、それらの行為の効力をさかのぼって否定して、
破産債権者の利益を確保し、一般債権者に公平な弁済を図るための制度が、
この否認権です。
民法上の債権者取消権と類似の制度です。
一方、次の点には慎重な配慮がなされなければなりません。
すなわち、経済的にピンチに立たされた債務者は、窮状を打開するために
資金の捻出や営業の継続に向けてさまざまな手段を尽くすのが普通であり、
その場合には第三者や債権者も当然にかかわりを持ってくるが、
債務者やその取引の相手方の正当な努力が後になって
その効力が否定されるようなことはあってはなりません。
したがって、破産宣告前の行為を否認するには、その行為がなされた時の
債務者が置かれた状況、行為の目的、行為の内容、
行為の相手方(受益者)の動機や状況など、
諸般の事情からみて、その効力を否定されてもやむを得ないと
みられるだけの条件を必要とします。
法は、故意否認、危機否認、無償否認の3つの類型を設けて、それぞれの
要件を規定しているが、これらはあくまでも類型モデルであり手段にと
どまり、これらに共通して流れる思想は、右の実質的な考慮です。
否認権は、管財人が裁判上行使するほか、裁判外で否認権が主張され、
裁判外で和解がなされることももちろん有効です。
実際上も、管財人は否認権を武器に有利に交渉、和解を進める
ことが多いです。
否認権の行使により、破産者の行為はさかのぼって無効になり、
財産関係はその行為がなかった状態に復帰します。
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