発行者(振出人)が受取人に一定金額の支払いを約束する形式の

手形(支払約束証券)で、取引上は、約手といいます。

 わが国では、内国手形取引では、支払決済にも、金融手段にも、

ほとんど約束手形を利用します。

例えば、甲と乙が売買の契約を結んで、甲が乙に手形で代金支払いを

する場合や、甲が乙から金を借りて、借用証の代わりに手形を

交付する場合などに、最も普通に利用されるのは約束手形です。

甲が振出人として約束手形に署名すると、為替手形の引受人と同じように、

主な債務者として、満期において手形の支払いをする義務を負います。

そこで、この約束手形を交付された乙は、支払呈示期間の経過後も手形債権の

時効完成の場合を除き、甲に手形金および満期後の利息を請求できます。

 約束手形では振出人がはじめから主な手形債務者であり、

引受の制度はありません。

したがって、引受の拒絶による満期前の遡及の制度はありません。

振出人の破産その他無資力化だけが満期前の遡及原因になります。

 約束手形の要件は、約束手形であることを示す文句(約束手形文句)、

一定金額の支払いを約束する文句(支払約束文句)の記載を要し、

一方、支払人の記載を要しないほか、為替手形と同じです。

 ただ一覧後定期払いの場合に引受呈示(振出日より1年内)の制度を置き、

一覧後の期間(一覧したことを記載して署名した日付から、

一覧の記載を拒んだ場合は一覧拒絶証書を作り、

その日付から起算する)によって満期を決めます。

また、為替手形のような規定がないので、自己指図の約束手形(振出人と

受取人とが同一人である約束手形)が認められるかどうかについて

争いがあったが、最近の学説・判例はこれを有効と解しています。

 カテゴリ

 タグ