我が国の刑法62条によれば、「正犯を幇助ほうじょした者は、従犯とする。

 従犯を教唆きょうさした者には、従犯の刑を科する」と定めています。

 すなわち刑法にいう 「従犯」 というのは、正犯者が、ある種の

 犯罪行為を演ずるのに際し、これに故意的に協力する

 意思を持って援助行為をする場合をいいます。

 ただ教唆行為に属するものは除外されるのです。


  正犯ないし共同正犯の成立する場合と、「従犯」 との区別に関しては、

 見解が分かれています。

 
 

 ①主観説によれば、自己の犯罪をする意思に出た場合が、正犯であり、

 他人の犯罪に参加する意思に出たのが従犯であるとし、

 ②客観説のうち形式説は、実行行為を分担したものを正犯とし、

 そうではなく、これの指示行為を演じた者を従犯とし、

 更に

 ③事を実質的に考えようとする者は、結果的にみて、重要な部分を

 演じたかどうかによって両者を区別しようとします。

 

 実際としては、上記の三説を総合して決定するのが

 妥当となっています。


  従犯の成立要件としては、客観的に犯人の犯罪の実行を支持援助した

 行為があること、そして被援助者は有責的に犯罪の実行行為を

 演ずることを要求します。

 そしてこの支持援助行為は、物理的力による支持でも

 精神的支持行為でも、敢えて問われません。


  この意味において、従犯的行為には、

 ①有形的従犯と、

 ②無形的従犯
 
 との区別があります。


  前者は、器具の給与、その他の有形的な方法をもって援助する場合であり、

 後者は、誘導指示、その他無形の方法で援助する場合をいいます。

 さらに主観的要件としては、正犯を援助する意思、すなわち

 自分は他人のある犯罪行為を支持しようとするものだと

 いう認識を必要とします。


  従犯の刑罰は、必ず正犯の刑よりも減軽します。

 そして拘留刑とか科料に処すべき犯罪の従犯は、特別の規定がある

 場合のほかは、これを処罰しないものとしています。