故意・過失により事実に反する外観を作り出した者は、その外観を

信じて行為した善意の第三者に対し、外観が事実に反することを

主張し得ない法理をいいます。

外観は表見ともいい得るので、外観主義を表見法理ともいい、わが国では、

後者の方が一般に用いられています。

 取引の安全・迅速を保障するには、取引の個性や取引の内実を調査

しなくとも、取引なり、取引の相手方の外観を信頼でき、そのような

外観を作り出した者にその外観に応じた責任を負わせることが

必要であり、商法上このような法理が広く制度化されています。

外観主義はドイツ法で構成されたものであるが、これとほぼ同じ

法理に、禁反言の原則(エストッペルの法理)があります。

もともと英米法で証拠法上の法理として採用され、今日では広く、既に表明した

自己の言動に対してそれと矛盾する言動をなし得ないという理論として

確定しています。

これには、記録(判決)における禁反言と表示における禁反言とがあります。

外観主義も禁反言も、その原理の適応の結果はほとんど違いがありません。

 わが国の例では、会社が、代表権のない取締役に社長・副社長・

専務取締役・常務取締役などの肩書を付けた場合(明示的に付ける

場合のほか、肩書としているのを承知のうえで放置している場合など)、

その者に代表権があると信じて取引した第三者に対し会社は責任を

負わなければならない表見代表取締役の制度、不実登記の効力、

名板貸、表見支配人、商号続用の営業の譲受人の責任、

持分会社の自称社員や未登録の退社員の責任など

この法理を具体化した多くの規定があります。

 タグ