権限のない人が勝手に他人の名称を用いて手形に署名することです。

偽造された人(被偽造者)はだれに対しても偽造を理由に支払いを

断れます(物的抗弁)。
 
 預かっていた他人の印章を勝手に利用したり、印章を盗んで

使ったりして、他人名義の記名捺印をするのが典型的で

あるが、他人の署名のある紙片を悪用して手形にしたり、

筆跡をまねたりするものも偽造です。

また、判例は、代理人が署名せずに、直接本人名義の署名をするのを、

署名代理と呼んで、代理の一種とし、無権限でなされた署名代理は、

無権代理として取り扱っているが、代理署名をとっていない以上、

文言性を尊重する通説の下では、無権代理ではなく、まさに

偽造にほかなりません。

 偽造された署名の名義人(被偽造者)は、偽造の事実を主張して

だれに対しても請求を拒むことができます。

代理関係がない以上は、被偽造者が追認しても偽造署名が有効に

なることはなく、また、被偽造者が表見代理の責任を負う

こともないと考えられてきたが、最近では、判例が

偽造の遡及的追認を認め、また、所持人が善意で署名者に代行権限が

あると信じた場合に表見責任を認めるようになりました。

 偽造者についても、従来は、証券上に名を表してない以上、

手形責任はないと解されてきたが、判例は、善意者に

対して無権代理人に準じた担保責任を負う事を

認めました。

 偽造者が不法行為責任を負い、多くの場合、被偽造者が使用人の偽造について

使用者責任を負うことはいうまでもありません。

 偽造の手形行為は無効であるが、それ以外の署名者は独立の手形責任を

負います(手形行為独立の原則→手形法7条)。

そこで偽造の裏書で手形を譲り受けても、偽造の署名の介在していることを

知っていても、直接の裏書を重過失なく真正な署名と信じて手形を

取得すれば、善意取得者として、偽造署名以外の署名者に

請求ができます。

 なお、変造という概念もあります。

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