法定刑とは、刑法各則の条文をはじめとし、その他、刑罰を規定した

 特別法において、各個の犯罪について規定されている

 抽象的な刑罰自体を指しています。



 たとえば刑法199条で 「人を殺した者」 について定める 「死刑又は無期若しくは

 5年以上の懲役」という刑、同法235条が「他人の財物を窃取した者」 に

 対して定める 「5年以下の懲役又は50万円以下の罰金」 が

 それに当たります。
 

  法定刑を定める形式は、大別して二つのものとすることができます。

 一つ目は、 「絶対的法定刑」 と称される場合であり、それは刑罰の種類・

 程度を絶対のものとして規定し、裁判所に刑罰の種類・程度につき

 裁量の余地を与えないものです。

 例えば、敗戦前の刑法73条において、「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、

 皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ

 死刑ニ処ス」 としていた (現在はこの規定は廃止されています)

 ような感じです。

 しかし、現行法では、このような絶対的法定刑を認めているのは、

 81条の外患誘致罪のみとなっています。


  二つ目は、「相対的法定刑」 であり、これは刑罰の種類、範囲を

 相対的に規定し、幅を持たせている場合です。

 それは、その相対的な幅の間で、裁判所をして、各々おのおの具体的な

 犯行に対し相応しい刑罰の種類と程度とを裁量によって

 決定させるためであり、この形式の方が、上記の第一の

 形式 (絶対的法定刑) よりも、はるかに刑事政策的な

 目的を達成するに適しているからなのです。

 現行法をはじめ、その他の特別刑罰法規ではおおむ

 法定刑はこの相対的法定刑に依っています。