我が国の刑法上の法定刑は、原則として 「相対的法定刑」 であって、

 刑罰の種類または程度に最高限度と最低限度とを明示しています。



 裁判所は、その範囲内において、個々の具体的犯行につき、法律が特に定めている

 それを加重する事情、並びにそれを減軽する事情の存否を審査して、これを修正し、

 そしてその習性された範囲内で、更に犯人および犯行の諸事情・程度等を

 審査して、適当の具体的刑罰を定め、これを言い渡すのです。


  例えば刑法は、累犯者の場合、または併合罪のような場合は、これを加重しなければ

 ならないものとし、また逆に中止犯とか心神耗弱者とか、従犯のような場合には、

 これを減軽しなければならないものとしています。

 そればかりではなく、上記のような刑罰を加重または減軽する事情があるにしても

 ないにしても、具体的犯罪の情状が同情に値するものであるときは、

 いわゆる酌量減軽をもすることができるものとしています。


  それであるから抽象的な相対的法定刑は、上記のような諸事情の

 存否によって、ここに具体的犯行に対し是認刑罰の種類と

 程度範囲は、ある程度に修正を受けてきます。

 これを 「処断刑」 と称します。

 例えば、強盗罪を犯した累犯者が心神耗弱者であれば、その処断刑は

 2年6げつ以上10年以下の懲役となります。


  そして上記の 「処断刑」 の範囲内で、裁判所は、更に犯人の主観的

 および客観的諸事情の一切を斟酌しんしゃくして、いよいよ最後に具体的な

 刑罰を言い渡すことになります。

 この処断刑の範囲内で、実際に言い渡される具体的な刑罰を

 「宣告刑」 と称します。