「仮釈放」 とは、自由刑 (ただし、拘留を除く) の執行を、まだ全部終了して


 いないが、その一部の執行状態により、もはや残りの刑罰の執行を必要と


 しないと認められる場合において、一定の条件をつけて受刑者を


 仮に釈放し、その後、残っている刑期に相当する期間内に、


 釈放条件に違反することなく経過するときは、もはや


 残余刑の執行は終了してしまったとする


 刑事政策的な処分をいいます。



 
  これは刑事政策的な見地に出ている一制度であって、その刑事政策的意義は、

 「刑の執行猶予制度」 などと同様です。


  仮釈放の制度は1791年、英国の植民地のオーストラリアにおいて流刑の囚人を

 島内に留まることを条件として釈放したことに由来するとされています。


  我が国の刑法は仮釈放の条件として 「懲役又は禁錮に処せられた者に改悛かいしゅんの状が

 あるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については

 10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放する

 ことができる」 としています。

 少年の受刑者に対しては、少年法において、更に有利な

 仮釈放の要件が定められています。


  仮釈放を許可するには、「改悛の状」 がなければなりませんが、このような状況が

 あるか否かの審査手続に関しては、更生保護法33条以下に規定されています。


  仮釈放は、ある意味において自由刑の一延長であり、外部においての

 執行ともいえます。

 そこで、たとえ拘禁は解かれ、自由の社会に解放されても、その行動に対しては、

 これを野放しにせず、ある程度に取り締まる必要があります。

 そこで現行法制の下では更生保護法の規定において、仮釈放者をもって

 保護観察の対象者とし、一定の事項を定め、これを遵守させる

 ことにしています。
 

  仮釈放は以下の場合に取り消すことができます。

 すなわち
 

 一、仮釈放中、更に犯罪を犯し、罰金以上の刑に処せられたとき。


 二、仮釈放前に犯した他の犯罪について罰金以上の刑に処せられたとき。


 三、仮釈放前の他の犯罪について罰金以上の刑に処せられていた者であって、


   その刑の執行をすべきとき。


 四、仮釈放中に遵守すべき事項を遵守しないとき。


 
 例えば制限住居を離れ、正業に従事せず、あるいは善行を保持せず、または

 犯罪性のある者ないし不良者と交際し、ないしは保護観察官の許可を

 受けず、住居を移転し、長期の旅行をするような場合です。


  上記のような仮釈放の取消しを受けることなく、なお残っている刑期に相当する

 期間を経過したときは、刑の執行はここに全部終了したものとみなされます。

 なぜならば、仮釈放処分が取り消されたときは出所中の日数は刑期に算入しない

 旨の規定があるので、この規定を反対的に解釈してくると、理論上当然に
 
 上記のような結論が出てくるからなのです。


  仮釈放に類似した制度として、別に 「仮出場」 という制度があります。

 これは、1日以上30日未満の拘留という自由刑を受けた者、または罰金・

 科料の刑を受けて完納することができないため、これに換えて労役場の

 留置を受けている者に対し、情状によって行政官庁の処分で、

 仮に出場を許可する場合をいいます。

 仮出場を許可するには、仮釈放の場合のように刑期3分の1の経過と

 いうような制限はなく、改悛の状があることも必要でなく、

 いつでも適宜に許可することができます。


  なお、仮釈放と仮出場を合わせて広義の仮釈放と称します。