火が媒介物を離れて独立して燃焼を続けることができる状態に達すれば

 放火罪は既遂にあたる、とする説をいいます。


 放火罪や失火罪の既遂時期を定める学説の一つとなっています。


  ドイツの判例・通説が採るところで、我が国の判例も旧大審院 (現・最高裁判所) 以来

 この考え方を採用しています。


  この説では、例えば、他人の家に放火するためにぼろ切れに

 火をけたとき、ぼろ切れが燃えついえても家の一部が

 燃えている状態になれば既遂となります。

 放火罪や失火罪は公共危険罪にあたりますが、独立燃焼が始まれば

 公共の危険が既に発生するということがその根拠となります。

 もっとも、畳・建具といった取り外しの可能な、いわゆる造作ぞうさく

 建物の一部とはいえません。

 それで、造作を焼いただけでは建物を焼いたことにはならず、

 この説でも放火の既遂とはなりません (判例)。


  この説には、我が国のような木造家屋の多いところでは放火後すぐに

 独立燃焼することが多く、未遂の認められる余地が狭いです。

 それで、任意に消火しても中止未遂の恩恵に浴する場合が

 少なくなるという批判がなされ、通説は、目的物の

 重要な部分が燃焼して、その効用を失ったことを

 必要とするという 効用喪失説

 を採用しています。