貨幣・紙幣・銀行券による取引の安全を保護するために、これらの偽造・


 変造・行使・交付・輸入・収得などを処罰する罪をいいます。



 取引の安全のほかに、国の通貨発行権も保護法益としています。


  本罪には、以下のようなさまざまな態様があります。

 

 ①狭い意味の通貨偽造罪


 

  使用する目的で、通用の貨幣・紙幣・銀行券を偽造・変造する罪で、刑は無期または

 3年以上の懲役に処せられます。

 「通用」 とは、事実上通用するという意味だという説もありますが、

 通説は強制通用力があることを指しているとしています。



 

  貨幣とは、硬貨のことであり、紙幣とは、政府発行の紙の通貨です。

 銀行券とは、政府の認める一定の銀行 (現在は日本銀行) の発行する

 紙の通貨のことです。

 我が国で現在通用している通貨は、すべて日本銀行の発行する銀行券です。



 

  偽造とは、通貨発行権者でない者が、通貨の外観を持つ物を作ることです。

 一般の人に、本当の通貨と信じさせる程度のものであることが必要となります。



 

 ②偽造通貨行使罪


 

  偽造・変造の貨幣などを行使し、または使用する目的で他人に交付したり

 輸入する罪で、刑は偽造と同じです。

 輸入は陸揚げで既遂か、領海に入ればよいのかが争われています。



 

 ③外国通貨偽造罪


 

  国内に流通する外国通貨が対象となります。

 流通とは、強制通用力のあるということだという説もありますが、

 事実上流通することで充分だとされています (通説)。


 
 

 ④偽造外国通貨行使罪



 

 ⑤偽造通貨収得罪


 

  使用する目的で偽造・変造の通貨をそれを承知して手に入れる罪で、

 刑は3年以下の懲役に処せられます。

 上記の①から⑤までの各罪は、未遂も罰せられます。



 

 ⑥偽造通貨収得後知情行使罪


 

  他人から偽造・変造通貨などを手渡された後、それが偽造・変造で

 あることを知ってこれを使い、または使う目的で人に交付する罪で、

 刑はその額面価格の3倍以下の罰金または科料に処せられます。



 

 ⑦通貨偽造準備罪


 

  貨幣などの偽造・変造のために、器械や原料を準備する罪で、

 刑は3月以上5年以下の懲役に処せられます。

 通貨偽造の一種の予備罪を独立罪として規定したものです。