行使の目的で、有価証券を偽造および変造し、または有価証券に虚偽の記入を

 する罪と、偽造・変造の有価証券または虚偽記入をした有価証券を使用し、

 または使用する目的を持ってこれを人に交付し、若しくは輸入する

 罪で、刑はいずれも3げつ以上10年以下の懲役に処せられます。


 行使等の罪については、未遂も罰せられます。

 これも有価証券に対する公共の信用を保護法益としています。


  有価証券とは、例えば、小切手や商品切手などのように財産権を表した証券で、

 その権利の行使・処分のために、その証券の占有を必要とするものです。

 刑法162条は、公債証書や、官府の証券等を、

 その例として挙げています。

 官府の証券とは、財務省証券、郵便振替詔書などに当たります。

 流通性のあることが必要かを巡って争いがあり、

 判例・通説は必要とはしないとしています。

 それで、鉄道の乗車券や宝くじなども有価証券に含まれます。


  偽造とは、他人の名義を偽って有価証券を作り出すことです。

 手形の振出しのようないわゆる基本的な証券行為については、

 他人名義を冒用する場合にのみ偽造となります。

 変造とは、真正の有価証券に権限なしに

 変更を加えることをいいます。

 
  虚偽記入とは、有価証券に真実に反して記載をするすべての行為を指し、

 ただ偽造、すなわち作成名義を偽って証券を作り出す

 行為のみが、除外されます。

 しかし、有力な学説は作成権限のある者がその内容を偽って、

 記入することだとしています。

 それで、有力説では例えば、倉庫営業者が寄託を受けない物について

 預かり証券を発行するような行為がこれに当たり、他人の名義を

 冒用して約束手形に裏書をするなどの行為は、

 偽造に当たることになります。


  なお平成13年の改正刑法で、支払い用カードの磁気部分の偽造を

 処罰する支払用カード電磁的記録に関する罪の規定が

 新設されました。