共同不法行為には三つの場合があります。
①数人が共同不法行為によって他人に損害を加えたとき、
②共同不法行為者のうちだれが損害を加えたか知り得ないとき、
③教唆者および幇助者は、共同不法行為であって、
各自連帯して賠償責任を負担します。
上①の場合、各行偽者の間に共同関係のあることが必要であるが、
その共同関係とは、各行偽者間に共同し不法行為をするという
認識があることを要せず、甲の不法行為と乙の不法行為が
単に客観的に関連共同していればいいです。
もっとも、①から③のいずれの場合においても、行為者のそれぞれに、
不法行為成立の一般的要件-故意・過失、違法性、責任能力、
損害発生との間の因果関係が備わっていることが必要です。
例えば、甲会社と乙会社とが川に放流した薬品の化合によって農作物や
魚類に被害が生じた場合にも、客観的な共同関係は認められます。
しかし、共同不法行為が成立するためには、甲会社および乙会社のそれぞれに
他方会社の放出物と化合して害毒を及ぼすということについての故意または
過失が認められねばなりません。
また、甲の運転する自動車が交差点で信号を無視して暴走してきたため、
乙の運転する自動車がこれを避けようとしてハンドルを切りそこない、
歩道を通行中の人をはねたという場合にも、甲と乙の間に
共同関係は存在します。
そして、たとえ甲と乙の過失の割合が8対2であっても、両者は
共同不法行為者として連帯して賠償を支払う義務を負います。
すなわち、共同不法行為の効果は、各共同行為者の過失の大小に
かかわらず、連帯債務であり、1000万円の損害賠償とすれば、
各自が被害者に1000万円全額の支払義務を負い、
そのうち1人が弁済すればその限度で他の債務者の債務も
消滅します。
過失の割合は、単に、各共同不法行為者の内部的な負担部分を
決めるだけです。
つまり、先の例で、乙が被害者に1000万円を支払えば、甲に対して
800万円を求償できます。
なお、共同不法行為の効果を、連帯債務ではなく不真正連帯債務と解する
学説も有力であるが、各自が損害賠償権利者に対して全額を
支払わねばならない義務を負担する点では、変わりはありません。