女中が婦人の衣服を試しに着用して、すぐに元通りにしておくのは、
一時使用したうえで返還する意思があり、勝手に自分の物として
取り扱う意思 (不法領得の意思) がありません。
これを 「使用窃盗」 と称しますが、窃盗罪にはならないとするのが
多数説となっています。
判例も 「不法領得の意思を持たずに、単に一時使用のために、
他人の財物を自己の所持に移しても窃盗罪にはならない」
としています。
この場合には、
①たとえ他人の意思に反しても罪にはならないが、財物の経済的価値を
減らす意思があった場合には罪となる、という説②財産上の損害が軽微で、刑法上問題とするに足らない場合の
使用窃盗に限って罪とはならない、という説
などがあります。
なお、他人の預金通帳を使って預金を引き出したときには、
通帳を元の場所に返しても使用窃盗ではなく
窃盗罪となります。