公信の原則(こうしんのげんそく)


例えば、本当は所有者ではないのに現にBさんがデジカメを所持していて、

あたかも彼が所有者であるようにみえる場合、それを信頼して取引

した人は保護されなければならないという原則です。


もしこのような原則がないとすれば、Bさんを所有者だと思って

彼の所持するデジカメを買ったところ、実際はAさんから拝借

したものだったという場合、たとえ常識的にそう信じるのが

もっともだと思われる場合でも、所有権を取得できない

ことになります。


なぜなら、貸借人は何ら所有権を持っておらず、ないものを

買主に移転することはできないからです。


しかし、相手が本当の所有者かどうかについて正確に調査

する方法はありませんし、またいくら所有者だと思って

取引しても、その人が所有者でなければ権利を

取得できないとなると、著しく取引の安全を

害してしまいます。


そこで、事実と異なる外観がある場合に、そのような外観を信じて、

かつそう信じることに不注意がなくて(善意・無過失)取引した

人を保護し、外観どおりの権利を得させようと

するのが当原則です。


我が国の民法では、動産に関する即時取得の制度がこの原則の

最も顕著な例です。


しかし、不動産の取引については、この原則が認められて

おりません


ですので、例えば、実際はAさんの所有地であるのにBさんの

所有として登記されている場合、それを信じてBさんから

買い受けても保護されることはありませんし、所有権を

取得できません(ただし、Bさんに対しては

代金返還や損害賠償を請求できます)。