外観上は権利の行使のようにみえても、実質的には公共の福祉に反して権利行使といえな
い場合のことです。こういう権利の行使に対しては、これを認容する必要がないばかり
か、逆に不正行為として損害の賠償を求めることができます。判例に現れた数列を
示すと、
①隣地の所有者に土地を高価に売りつけようとして、本人にはまったく無益で、隣地の所
有者には致命的になるような、いやがらせの建設をした場合、普通は不法行為に基く損
害賠償がとれるし、場合によると、その取り除きも考えられます。
②隣地で養魚場をはじめ、たくさんの掘貫井戸を掘って、水をくみあげたため、燐家の料
亭で売り物にしていた泉水がかれてしまった場合、不法行為による損害賠償の請求を認
めます。
③別に使っていないわずかな荒地を、他人が重要な工作物(温泉の引湯官を埋める、電車
線路の地盤として埋め立てるなど)のために無断使用してしまっており、それを取り除
くことの損害が大きく、公共の損害も少なくないような場合、その取り除きの請求(
物上請求権)は濫用とされ、ただ損害賠償の請求だけが許されます。
④わずかの貸金を理由に、信用もあり、支払能力も十分な借主に対し、勧告もしないで突
然仮差押えをした場合、不法行為による損害賠償義務があります。
⑤借地人が建物とともに借地権を無断譲渡した場合、新しい借地人では困る場合の事情が
ない限り、これを理由に、解約するのは、解約権の濫用で、無効だとするものがあり
ます。
⑥親権を子の利益に反して(例えば、芸妓見習い強制のためなど)行使するのも、ことご
とく権利の濫用として無効です。
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