通常の判断能力を欠き、あるいはそれが不十分である者に、

単独で訴訟を行わせ、その効果を帰せしむることは妥当ではありません。

そこで単独で訴訟にかかわる行為を行い得るには一定の能力を必要とし、

これを訴訟能力と呼びます。

その趣旨は民法における行為能力と同じであり、

また訴訟能力と行為能力は、原則として対応するとされます。


訴訟能力がまったくないとされるのは、未成年と成年被後見人であります。

ただし、未成年については、営業の許可を受けたときなど、

独立して法律行為ができる場合には、訴訟能力ありとされます。

成年擬制がはたらくときも同じです。

これらの者については、法廷代理人が代わりに訴訟行為をします。

未成年の場合でも、同意を与えて本人にさせることはできません。


次に、被保佐人と、訴訟行為をするについて補助人の同意が必要とされた被補助人が

訴えを提訴するには、保佐人ないしは補助人の同意がいります。

また、訴え提訴について同意を得ていても、一定の重要な行為をする際には、

改めて同意が必要です。

これに対し、訴えられたときには同意は不要である以上は通常の民事訴訟の場合で、

離婚などの身分関係の訴訟では、意思能力が有れば、単独で訴訟行為ができます。


絶対的訴訟無能力者が自ら行った訴訟行為、

および、制限的訴訟無能力者が同意なくして行った訴訟行為は、無効であります。

しかし、すぐ無効として訴えを却下してしまうのではなく、補正を命じます。

つまり、法定代理人ないしは保佐人等に、追認するかどうかを問い合わせます。

そして、追認がなされたときは、当該訴訟行為がなされたときに

さかのぼって有効となります。