故意または過失により他人の利益を侵害した場合に発生した損害を賠償する責任のことを言います。

債務不履行の場合における契約責任と並ぶ民事上の二大責任です。

一般の場合の不法行為責任(一般的不法行為)を定めたものであって、特殊の場合として、

監督義務者の責任、使用者責任、注文者の責任、土地工作物の責任、

動物占有者の責任、製造物責任、自動車事故の場合の

運行共用者責任があります(特別的不法行為)。

一般的不法行為の成立要件は、次の4つです。



①加害者に故意または過失があること。

②他人の利益侵害すなわち違法性。「権利」として認められていないもの、例えば老舗ののれんなど、

他人の「法律上保護される利益」を侵害した場合にも不法行為は成立します。学説はこれを

侵害行為の「違法性」の面からとらえ、その行為が客観的にみて法秩序に反しており、

非難に値するものであれば足りると説いています。

正当防衛、緊急避難、自力救済の場合には、いずれも違法性は存しません。

③加害者に責任能力のあること。加害者に責任能力すなわち自分の行為が違法なものとして法律上

非難されるものであることを認識できる知能がなければ、不法行為は成立しません。

12歳程度になれば責任能力が備わるとされてます。それ未満の者や判断能力のない者は

責任無能力者であって、不法行為は成立せず、監督義務者の責任が問題となります。

また、酒、薬物などにより責任能力を欠いていた者の行為については、「故意又は過失によって

一時的にその状態を招いたときは」責任を負わなければなりません。

④損害の発生。加害者の行為により損害が発生しなければ不法行為は成立しません。

損害賠償が不法行為責任の内容だからです。加害行為と相当因果関係の範囲内にある

すべての損害を賠償する責任が生じます。

財産上の損害たると精神上の損害たるとを問わない。

将来の給料など「得べかりし利益の喪失」(逸失利益ともいう)をも含みます。

相当因果関係の範囲内にある損害とは、その加害行為により通常発生し得ると考えられる

すべての損害です。特別事情により発生した損害については、加害者が行為当時に

その特別事情を認識していたか認識し得べきであった場合に限られます。

例えば、出張中の者が事故にあったため帰る予定が遅れ、飛行機を利用したところ墜落し

死亡した場合に、最初の事故と航空機による死亡との間に

相当因果関係はありません。

ゆえに、故意の場合と過失の場合とで損害賠償の範囲が異なるということはなく、

ただ故意の場合には賠償すべき損害の範囲が広くなる

可能性があるだけのことです。

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