訴訟事件の審理に当たっては、まずは、当事者双方が、お互いに、

真に争おうとしている「事実」はなにか、

つまり、証拠調べによって証明すべき「事実」はなにかについて

裁判所と当事者双方との認識が一致する必要があります。

旧法時には、それが何であるかを知ることができるために

口頭弁論を繰り返してそれを探り、やっと真に争う事実とそうでない事実とが区別され、

ときには、証拠調べを何回か行って初めて、

この事件の解決のために、在否を確定すべき事実がどのようであるかの

共通の認識を持つことができたのであります。

もっとも、旧法でも、建前としては、それを早期に知ることができるために、

準備手続と準備的口頭弁論がありました。

準備手続では、争点・証拠の整理のために当事者間の協議で行い、

ときにはそれについて当事者間の合意によって、

証明すべき事実とその証明のための証拠方法を整理し、

最初の口頭弁論期日において一気呵成に決着をつける予定でありました。

それが十分に機能しないのは、準備手続では証拠調べができないことにもあると考えられ、

証拠調べができる口頭弁論を争点・証拠の整理のために利用することが考えられ、

これを準備的口頭弁論として、その終了後には、継続的に証拠調べを行って

判決まで進めていくという構想でありました。

しかし、いずれも、失敗し、やがて、どちらも実務では行われなくなってしまいました。

そこで、新法では、この失敗を教訓にして、

3つの争点・証拠の整理の手続を設けています。

準備的口頭弁論、弁論準備手続、書面による準備手続であります。

いずれも、結局は、「その後の証拠調べによって証明すべき事実の確認」にあるから、

それに向けて、訴訟行為が行われます。

そして、この手続が終了した後では、最初の口頭弁論の期日において

直ちに証拠調べができるように準備し、そして集中的に証拠調べを行って、

判決まで進めようというのであります。

このような争点・証拠の整理の手続の終了後、それを無視するように、

新たな攻撃防御方法が提出された場合には、相手方から要求があるときは、

この手続の間に提出できなかった理由を説明しなければなりません。

この説明要求に応じなかったり、または十分な説明をしないときは、

相手方は、「故意又は重大な過失により」提出しなかったことの資料として、

その攻撃防御方法の却下を申し立てることができます。