裁判所書記官が送達する書類を保管しておいて、

送達を受けるべき者が出てくれば、いつでもそれをその者に交付することを

裁判所の掲示場に掲示することによって行う送達方法です。


送達書類が送達を受ける者に交付することができない場合には、

手続を進めることはできないから、交付する代わりに交付の機会を与えるだけで

送達したことにする制度です。

だから他の送達方法がとれない場合の最後の手段として認められます。


そこで公示送達が許されるのは、当事者の住所、居所、

その他送達をなすべき場所が知れない場合、また外国での嘱託方法ができないか、

あるいはそれによっても送達の効果の見込みがないと認められる場合に限られます。

その手続は裁判所書記官への申立てにより、なされます。


しかし、公示送達をする要件が具備していて訴訟の遅滞を避けるために

必要であると認めたときには、当事者からの申立てがなくても、

裁判所は職権で公示送達をするように命ずることができます。

当事者の申立てによる場合には公示送達の要件が存在することを

証明しなければなりませんが、職権でする場合には職権で調査して

決定の形式で裁判します。

いったん申立てにより、または職権で命じた場合は、

同一訴訟で同一人に対するその後の送達は、書記官が職権で行うことができます。


いずれにしても書記官が送達書類を保管していつでも送達を受ける者が

出頭すればこれに交付することを記載した書類を裁判所の掲示場に掲示しますが、

呼出状の公示送達は、その原本をそこに掲示します。

そのうえ、裁判所書記官は本人に知らせる機会を多くするために、

公示送達をしたことを官報または新聞に掲載することができます。

公示送達の効力は、掲示を始めた日から2週間経過することによって生じ、

2回目以降の公示送達はその翌日に効力を生じます。


当事者は相手方の所在が不明な場合に公示送達をすると、

その公示送達された書類の中に、

相手方に対する私法上の意思表示が含まれている場合には、

その意思表示は、公示送達の掲示を始めた日から2週間経過すると、

相手方に到達したものとみなされます。

ただし相手方からは、「自分の所在を知っていたのではないか」とか、

「知らなかったことに過失がある」と主張し、立証することができます。