証拠

 当事者の一方が事実の存否を主張し、他方の当事者がそれを争うと、その事実を

判決の基礎とすることができるためには、だれの目からみても、

その存否が明確であるほどに、裁判所が確信を得なければなりません。

また、その存否が明確にされてゆくプロセスも、

ことに相手方当事者が納得できる一定の手続を

踏んだものでなければなりません。

このように、争われている事実の存否を明確にする材料が証拠であり、

その一定の手続が証拠調べ です。

 ①証拠方法と証拠調べ

 証拠方法とは、証拠調べの対象となる有形物をいいます。

人証と物証があります。人証には、証人、鑑定人、当事者本人があるが、

これに対する証拠調べが尋問(証人尋問、当事者尋問など)です。

物証には文書と検証物があるが、前者の証拠調べが書証(閲読)であり、

後者のために検証がなされます。

 ②証拠資料と自由心証主義

 証拠資料とは、裁判所が証拠方法を取り調べて得られた

結果(内容)であり、争われている事実の存否に関する裁判所の確信を

抱かせるのに役立つ材料のことです。

証人という証拠方法から証言という証拠資料が得られます。鑑定人から鑑定

(あるいは鑑定意見ともいいます)、当事者からその供述、

文書からはその記載内容、検証物からは

その検証結果という証拠資料が得られます。

その証拠資料がどれほど信用できるものか、つまり事実の存否をどれほど

証明する力(証拠力、証拠価値)があって、

確信の形成にどれほど役に立つかは、

裁判所の自由な判断に任されます。

これが自由心証主義です。

 ③証拠原因と判決における表示

 証拠原因とは、証拠資料のうち、

事実の存否につき確信を抱く根拠になったものをいいます。

判決において、この証拠原因は、判決理由中で、

主文の判断にどのように役に立ったかが

表示されることになります。