刑事訴訟全体の姿を描き出そうとする学説の一つであります。訴訟法律状態説に

よれば、刑事裁判訴訟手続は、手続とはいいながらも単なる手続の

積み重ねにとどまるものではなく、証明を通して、

検察官および被告人あるいは有利に、

あるいは不利に、一歩一歩発展していく浮動な状態であり、しかもこの浮動な状態は、

刑事訴訟法という法律に縛られた一つの法律状態であるといいます。そこで、

訴訟法上のいろいろな問題を検討するうえにおいても、

こうした訴訟特有の姿を忘れないで、その立場から考えなくてはならないことを

教えたのがこの見解であります(訴訟法的観察方法)。

 しかし、訴訟は全体的にみればこのような法律状態だることは正しいとしても、

一つ一つの手続は、裁判所・検察官・被告人の間において、厳密に

法律によって規整された法律関係であることも、

忘れてはなりません(訴訟法律関係説)。

訴訟が法律関係である一面を軽んじていると、被告人の

権利を侵害する結果にもなります。