訴訟における当事者主義が理想どおりの効果を上げるためには、検察官と被告人との間において、

攻撃防御の武器をできるだけ、平等にしなくてはなりません。そのためいろいろな制度が

考えられるが、しかし法律的な要素においては、両者の間には大きな開きがあります。

そこで、法律的な面から被告人を補助する制度として、弁護人制度が

設けられているのです。弁護人は、原則として弁護士の

資格を持った者から選ばれます。

弁護人はこのように被告人の権利を擁護する立場にあるため、現行法は、この弁護人制度を捜査中の

被害者にまで拡張し、犯罪の嫌疑を受けた者はいつでも弁護人を付けることができます。

 弁護人には、被告人自身(あるいは配偶者など一定の親族)が私費をもって選んだ者(私選弁護人)と、

国で付けてくれた者とがあります(国選弁護人)。弁護人は、私選されようが国選されようが、

法律によって認められた権利に差異がありません。いずれの場合にも、弁護人は、

被疑者や被告人の権利を十分に擁護するため、

彼らと立会人なくして連絡し得る権利(接見交通権)や、書類証拠物を読んだり書き写したりする権利、

あるいは、証人尋問や鑑定、検証などに立ち会う権利などが認められています。

 それらの権利のうち、あるものは被疑者や被告人の権利を代理するにすぎないものもあるし(代理権)、

あるものは弁護人なるがゆえに当然認められた権利(固有権)もあります。

 そして弁護人の権利は、できるだけ固有権と解することが望ましいです。代理権というのであれば、

被疑者や被告人が権利を失うとまさに代理権であるため、弁護人も権利を失うことになり、

被疑者や被告人の権利を十分に擁護することができなくなるからです。