金銭の貸借契約は、貸す借りるという意思表示の合致だけでは成立せず、実際にその

金銭が渡されたときに成立します。

こういう風に、意思表示のほか物の引渡しなどがなければ成立しない契約を、

要物契約といいます。

民法の定める13種類の典型契約のうち、消費貸借および使用貸借、寄託は要物契約です

(ただし、このほかに動産の質権設定契約、代物弁済契約のように、

契約法以外の規定による要物契約があることに注意)。


 要物契約は、ローマ法以来理論上歴史に認められているものだが、実益は少なく、

この法理を貫くと不都合な場合が出てきます。

例えば利息の天引きが拒否され、消費貸借で金銭の授受のないうちに

付けられた抵当権が無効となったり、また金銭授受以前に

作られた公正証書が無効となったりします。


 このようなことから、将来の立法では、要物契約を否認せよという学者の意見がありま

す(要物契約の否認論)。しかし、現行法の下でも、これと同じ内容の諾成契約を

締結することも認められるから(例えば、諾成的消費貸借)、

それほど差し支えあるものともいえません。

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