起訴をする権限を持つものが、起訴するかしないかを決める方式に2つあります。

2つは前もって法律が一定の前提条件を定めておき、それが満たされれば

必ず起訴しなければならないとするもので、

もう1つは一定の条件が満たされたうえで、なお種々の事情を考慮して起訴・不起訴の

いずれかを決めてよいとするものです。前者を起訴法定主義といい、後者を

起訴便宜主義といいます。前者の特徴は画一的・形式的であって、

起訴の基準が明確であり、犯罪と刑罰の結びつきを

緊密にするが、逆に後者は具体的・個別的な事情を加味でき、

起訴の基準が弾力性に富むものとなります。

 また、いったん起訴した後でも、第一審判決の前までなら、検察官は公訴を

取り消すことができるというように、公訴取消しを認める制度を

起訴変更主義、認めないものを起訴不変更主義ということがあります。

これもそれぞれ便宜主義、法定主義の延長とみることができます。

更に、刑法の場面での改善刑と応報刑の対立、

より一般的に近代派と古典派という、

いわゆる学派の対立にさかのぼって考えることができます。

 両者の長所・短所は、理論的には裏腹の関係にあるが、起訴の権限を集中的に

握った国家についての考え方が法治国家から行政国家ないし福祉国家へ

移行する傾向を背景として、起訴便宜主義が

むしろ合理的なものとされてきました。

 しかし、起訴便宜主義は起訴独占主義と相まって、ファッショ化への道をひらく危険もあることを

注意すべきでしょう。現行刑事訴訟法は起訴・不起訴を決める標準として犯人の

性格・年齢・境遇や、犯罪の軽重、情状、犯罪後の情況などをあげ、

起訴便宜主義に対する抑制としても作用するのです。

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