例えば買主が売買代金の支払いのため、売主に手形を交付した場合には

たとえ売買契約が無効であったり取り消されたりしても

手形上の権利は、直ちに消滅することはありません。

このように、基礎・前提となっている行為に効力がないときでも

結果としてなされた行為の効力に影響を受けない場合

この結果である行為を無因行為、基礎となった行為の効力の有無によって

その効力に影響を受ける行為を有因行為といいます。


売買契約や贈与契約(債権行為)に基づいて所有権を移転(物権行為)したところ

その契約が無効であったり取り消された場合

所有権の移転の効力に影響するか否かについては争いがあります。

ドイツ法では、物権行為は無因行為とされていることから

たとえ債権行為が無効であっても、所有権移転の効力に直ちに影響することはありません。


わが国でも、このドイツ法と同じ考え方をする学説もありますが

通説・判例は、当事者の特約がないかぎり、物権行為は債権行為の中に含まれ

独自の存在を持たないと解しているので

そもそも物権行為が無因行為か有因行為かの問題は生じないとしています。


取引の安全という見地からすれば、物権行為を無因行為とするドイツ法が優れています。

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