相続人が、相続財産の承継を全面的に否認することです。現行憲法に基づく民法改正前は、
家督相続が原則だったため、勝手な相続放棄の許されないことがあったけれども、いま
では純粋な財産相続だから、放棄は自由に認められています。しかし、実際には、農
村などで、長男一人に農家経営を承継させるために、次男以下の相続を放棄させる
目的に利用されることが大部分です。
ところで放棄は、家庭裁判所に申述しなければなりません。相続の放棄があると、放棄者
は、最初から相続人でなかったことになり、その人の相続分が他の共同相続人に、また
共同相続人がいないときには次の順位の相続人に承継されます。
したがって、例えば、遺産900万円で妻と二人の子が相続人なら、本来は、妻が二分の
一の450万円、子A、Bは二分の一の半分ずつ、つまりは各自225万円ずつという
ことになります。ところが、Bが放棄すると、Bは最初から相続人でなかったことに
なり、Aだけが子としての二分の一の相続分450万円を承継できることになりま
す。Bの放棄によって、別系統の相続人たる妻の相続分が増えるわけではありま
せん。この点は以前から解釈が分かれていたのでありますが、昭和三七年の改
正によって、上のような解釈に統一されました。
なお、放棄の場合には、代襲相続が認められないから、上の例で、Bの子Cは、Bに変わ
って相続することはできません。したがって、また、子が全員放棄すると、孫が代襲相
続できないから、直系尊属が固有の資格で相続人となります。
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