物権的返還請求権(ぶっけんてきへんかんせいきゅうけん)


法的に何ら正当な根拠(権原)が無いにもかかわらず、無権利者が物を占有

する際に、その物の占有を全面的に失っている物権者が、その物に

基づいて物の返還を請求することのできる権利をいいます。


例えば、Aさん所有の建築物を法的根拠(賃借権など)無しに無権利者の

Bさんが占有している場合に、AさんがBさんに対して自己の所有権に

基づいてその建築物の返還を請求することができる権利を有します。


物権的請求権の一種であり、所有権に基づくときは「所有物返還請求権

と称します。


「占有回収の訴え」にほぼ類似しておりますが、占有回収の訴えは占有

が「侵奪」された場合にのみ成立するのに対して、物権的返還請求権

は占有が「侵奪」された場合に限らず、現に無権利者が違法に

物を全面的に占有している場合に一般的に成立いたします

(ただし、留置権者や質権者は「占有回収の訴え」だけしか

行使できず、留置権・質権に基づく物権的請求権を

有しません)。


また、占有回収の訴えは侵奪者からの善意の特定承継人に行使できま

せんが、この物権的返還請求権は何人に対しても

行使することができます。


更に、この返還請求権については行使期間の制限が無く、消滅時効

にもかからないと解されています。


なお、請求権の内容、特に返還に要する費用を誰が負担する

のかについては見解の対立がありますが、判例は原則と

して相手方がこの費用を負担すべきだとしています。


物権返還請求権の解説