移送は次の⑤の場合を除いて裁判所の決定によって行いますが、
それは移送を受けた裁判所を拘束します。
①管轄違いに基づく移送
管轄違いの場合に訴えを却下して再訴を提起させるとなると、
時効中断が間に合わなくなったり、法律上の期間を遵守できなくなるおそれがあるし、
また同一の訴えの再度の提起は労力・費用の無駄でもあります。
しかも管轄は裁判所間の裁判権の範囲を定めているのであり、
またその定めは、かなりこと細かなもので最初に述べた不利益を
原告に一方的に押しつけることは適当ではないので、
裁判所は、当事者の申立てにより、または職権で、管轄権を有する裁判所へ移送します。
②遅滞を避ける等のための移送
原告の選んだ裁判所に管轄はありますが他の裁判所で審理したほうが、
訴訟の遅滞の生ずることを避けることができる場合や、
当事者間の衡平に適う場合には、当事者の申立てにより、
または裁判所の職権で移送できます。
③簡易裁判所の裁量移送
簡易裁判所が管轄を有するときでも、申立てまたは職権で、
その所在地を管轄する地方裁判所へ移送することができます。
④第一審裁判所の必要的移送
第一審裁判所としての地方裁判所または簡易裁判所が管轄を有するときでも、
当事者双方が他の第一審裁判所での審理を希望した場合、
簡易裁判所が管轄を有するときでも、それが不動産に関する事件であって、
被告が地方裁判所での審理を希望した場合には、
その希望に応じて移送しなければなりません。
更に、反訴として簡易裁判所に地方裁判所の管轄に属する請求がなされ
相手方から申立てがあった場合も、
これを地方裁判所に移送しなければなりません。
必要的移送の解説はこちら
⑤上級審による原審への差戻しに代わる移送
前審の判決が専属管轄違背である場合には、原審に差し戻す代わりに、
直接に管轄裁判所に移送します。
コメント (0)
コメントを書く