①人的会社━社員の個性が強く会社に反映し、個人的結合の色彩が濃い会社。

会社は営利を目的とする人的団体=人的結合であり、

その目的追及手段として会社財産を有します。

会社財産の基礎は社員の出資すなわち物的結合(資本結合)であるから、

会社の基本構造を知るためには、人的結合(人的要素)と物的結合(物的要素)との

関連を理解しなければならないと説明されてきました。

会社の中には、社員の結合(協力)すなわち人的要素に重点を置き、

物的要素を従とする人的会社と、逆に、物的結合に重点を置き、

人的結合が従となる物的会社とがあります。

人的会社は小資本であるが社員間に密接な信頼関係を必要とし、その結果

少数の社員に限定され、合名会社がその典型でありますが、

合資会社もその性質を持ちます。

これに対し、物的会社は大資本を形成し、人的規模は大となり、その結果として、

社員間の結合関係は密接さを失います。その典型は株式会社であります。

人的会社では個々の社員の個性に重きが置かれるから、

必然的に信頼のおける少人数の社員となり、

そのため、社員の自由な入社・退社を制約する持分譲渡の制限がなされるし、

また、除名などが認められます。外部にたいしては社員の信用が重視され、

会社債権者に対して無限連帯責任を負いますが、

その反面業務執行権や代表権は保障されています。

人的会社は、社員自身が会社の経営権を持つので、自己機関制をとります。

人的会社は社員の個性に重きを置き、個々の社員の意思が重要視されるので、

重要事項の決定については多数決制度になじまず、

原則として全員一致によります。

このような特色から、現行法上、例えば合名会社には法人格が

与えられているにもかかわらず、社団性については疑問が持たれ、

実際的には組合的性質のものといわれています。

②物的会社━社員の個人的結合の色彩が淡く資本結合(物的結合)に重点を置く会社。

物的会社は別に資本会社ともいわれ、必然的に出資者すなわち社員の数が増大します

(わが国の1社の株主数で大きいものは50万人を超えるといわれます)。

そのため制度上各社員には業務執行権・代表権が与えられず、

またこの不利益に対応して、社員の責任は有限責任とされています。

物的会社では、右の有限責任の結果、会社債権者は社員の信用を目当てにできず、

会社財産のみが担保財産となるので、制度上、

会社が一定制度の資産を内部保留しなければならないものとし、

いわゆる資本(金)制度がおかれます。

資本金額は社員の出資数額をもって構成され、

その限度で会社内部に純資産額を保留しておかなければなりません。そのため、

いわゆる資本原則がおかれ、特に資本の充実・維持が厳格に要求されます。

その結果持分の精算を伴う社員の退社は認められず、

これによる投下資本回収の不利益に対して社員の地位の自由な譲渡による

回収の道が講ぜられています。

社員間には人的信頼関係は問題にならず、個々の社員の会社に対する

権利内容は出資すなわち資本的寄与の度合いに比例して評価されます。

(株式会社では株式、その他の会社では持分)によって決定され、

その保有数に比例して平等扱いをします。なお会社の経営は、

第3者(取締役)に専門的に行わせる第3者機関制をとります。

株式会社は物的会社の典型です。

人的会社の典型=合名会社とこの株式会社とはすべての点で対照的です。

③合同会社について━平成17年に成立した会社法で新設された合同会社は

社員が有限責任しか負いませんが、

社員の人的個性にも相当の重点を置くので、

人的会社・物的会社の分類の範疇には収まらない形態です。