仮登記担保(かりとうきたんぽ)


債務者が債務を弁済しないときには、債務者に属する所有権その他の権利を債権者に

移転する旨をあらかじめ契約し、これに基づく債権者の権利について仮登記若しくは

仮登録をしておくというように、債権担保の目的を達成しようとする

担保の方法をいいます。


例えば、AさんがBさんに1,000万円を融資する際に、Bさんの所有する時価2,500万円の

不動産について、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済、売買の予約などの約束をし、

将来の所有権取得を保全するため仮登記をしておき、万一弁済期にBさんが元利

合計の債務額を弁済できないときは、当然に(停止条件付代物弁済の場合)

あるいはAさんが予約完結権を行使することによって(代物弁済の予約、

売買の予約の場合)、Aさんがその不動産の所有権を取得するという

方法による担保を指します。



抵当権のように煩雑な手続を要せずに債権者の満足が得られることが利点であり、

広く行なわれるようになったのですが、債務者にとっては不利な点が

多々あります(例:1,000万円の債務で2,500万円の不動産を

喪失します)。


そこで判例は、債務者に不当な不利益を負わせることなく、しかも債権者の担保の

目的を達成できるように、前記のBさんが弁済期に履行しなかった場合には

Aさんは目的不動産を処分する機能を取得しますが、不動産の適正評価と

債務額(換価のための費用を含みます)の差額は清算金として

支払うべきだとしました。


上記の判例が形成されたことに基づき、昭和53年に仮登記担保契約に関する

法律が制定され翌54年4月1日から施行されました。


同法は、

  1. 所有権取得の手続として、債務者へ通知をし、その通知が債務者に
    到達した日から2ヶ月を経過しなければ所有権を取得できない。
  2. 清算義務を定め、精算金の支払いと不動産の所有権移転登記および
    引渡しとは同時履行の関係にある。
  3. 債権者が正当な清算金の支払いをするまでは元本と遅延損害金を
    提供して不動産の受戻しができる

ということなどを定めました。